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UA値・Q値・C値 断熱性能の指標について坪数や形状による影響を計算してみました

2024年1月29日

現状の断熱性能はUA値で評価されますが、UA値による評価を懐疑的に見ている人や、省エネ旧基準であるQ値やC値の指標を重要視している人もいるかと思います。現に、ハウスメーカー各社のHPを見ると、UA値だけでなく旧基準のQ値やC値について言及がされています。


しかし、それらの値はハウスメーカー各社で計算されたものの代表値であり、実際に皆さんが建てる住宅がその通りになるかどうかはわかりません。また、具体的にどのように計算されているかを言及しているサイトは少ないのではないかと思います。

そこで、『何がどう変われば数値がどの程度変わるのか』というところに注目し、計算してみました。

本記事では、坪数や住宅の形状について比較検討してみます。

 
 

1.UA値、Q値、C値の定義と省エネ基準の変化

UA値とQ値の違いと注目ポイント

省エネの旧基準であるQ値は住宅の総熱損失量を床面積で割った値になります。

H25(2013年)で制定された新基準のUA値は住宅の総熱損失量を外皮表面積で割った値になります。外皮表面積という言葉は聞きなれませんが、住宅の内側と外側を隔てている部分の面積と考えればわかりやすいかと思います。

これらの値はどちらも総熱損失量を面積で除して計算され、W/(m2・K)という単位で表されますが、除する面積が床面積外皮表面積で違うという点が1つ目の注目ポイントとなります。

このあたりを後ほど検証していきます。

2つ目の注目ポイントとして、どちらの値も総熱損失量を面積で除していますが、この総熱損失量の定義が異なります。

Q値の総熱損失量は換気(浴室の換気扇などからの排出)による熱損失を含むのに対し、UA値の総熱損失量は換気による熱損失を含みません

旧基準と新基準でなぜこのように変化したのかというと、Q値が熱負荷(エネルギー負荷)の削減の観点から基準化されたことに対し、新基準ではUA値(住宅外皮の断熱性能を表す値)と一次消費エネルギー量(熱負荷[エネルギー負荷]の削減によるエネルギー消費量)に基準を分けて考えるようになったことが要因に挙げられれます。

C値

C値は家にどれくらい隙間があるかという住宅完成間近になってから実測する唯一の値です。単位はcm2/m2で、床面積1m2あたりどれくらいのすきまがあいているか表した数値になります。C値は気密性を示す重要な指標で、C値が大きいとスカスカで隙間風が入る家になってしまいます。当然熱損失も大きく、せっかくUA値やQ値が良い値であったとしても実際のエネルギー負荷が高く冷暖房費が多くかかってしまうという可能性があります。


現行の基準にC値が含まれていないのは謎ですが、非常に重要な指標ですので(2回目)しっかりと測定してくれるハウスメーカーを選んだ方がいいです。C値を全く見ないハウスメーカーは建付けが雑でクオリティーがまちまちだと思っていいです。


一般的に、C値は1.0未満であれば問題ないと言われており、自社基準を設けているハウスメーカーが多いです。またそのうち纏めようと思います。

旧基準と新基準と最新基準

1999年制定基準では、Q値が2.7、C値が5.0以下が基準となっている。

 

2.住宅の坪数や形状違いでのQ値、UA値の計算

本検証では一条工務店レベルの断熱性能材をベースに、また、一部簡略化して検討してみました。具体的な条件は下記の通りです。

  • 熱貫流率 W/(m2・K) 壁:0.2、床:0.2、天井:0.15、窓:0.80 どれもトップレベル
    (壁・床は一条工務店の高性能断熱ウレタンフォーム190㎜を想定、天井は壁より高断熱にするため、ざっくり計算で0.15にした)
  • Q値の算出に必要な換気による熱損失(トイレや浴槽の換気、一条工務店であればロスガードなど)は無視した。
  • 通常断熱性の低い玄関も、一般の壁や床と同じ断熱性とみなした。
  • 床面の温度差係数は0.7、その他の温度計数を1.0とした。
  • 建屋の高さは一般的な2.4mとした。
  • 窓は30坪で20m2、45坪で30m2とした。

  

Case1 30坪平屋(長方形)の場合

まずはそれぞれの面積を出します。

床と天井の面積:9.10✖10.92=99.37m2

側面積:2.4✖9.1✖2=43.68 2.4✖10.92✖2=52.42 43.68+52.42-20(窓)=76.10m2

窓面積:20m2


次にそれぞれの熱損失を出します。

床:0.2✖99.37✖0.7=13.91W/K  天井:0.15✖99.37=14.91W/K

側面:0.2✖76.1=15.22W/K

窓:0.8✖20=16.0W/K

熱損失の合計:13.91+14.91+15.22+16.0=60.04


Q値=60.04÷99.37=0.604 W/(m2・K)

外皮の合計:99.37+99.37+76.10+20.00=294.84

UA値=60.04÷294.84=0.204 W/(m2・K)

Case2 30坪平屋(L字型)の場合

同様に計算していきます。まずは面積です。

床・天井:10.92✖5.46=59.62 7.28✖5.46=39.75 59.62+39.75=99.37m2

側面積:2.4✖(5.46+5.46)✖2=52.42 2.4✖10.92✖2=52.42 52.42+52.42-20(窓)=84.83m2

窓:20m2


熱損失を計算していきます。

床:0.2✖99.37✖0.7=13.91W/K  天井:0.15✖99.37=14.91W/K

側面:0.2✖84.83=16.97W/K

窓:0.8✖20=16.0W/K

熱損失の合計:13.91+14.91+16.97+16=61.79


Q値=61.79÷99.37=0.622 W/(m2・K)

外皮の合計:99.37+99.37+84.83+20=303.57

UA値=61.79÷303.57=0.204 W/(m2・K)

kumashi

壁の比表面積が増えて熱損失の総量が増える分、Q値は悪くなっていますね。

UA値に関しては、熱貫流率が0.2の壁が増えただけですのでほぼ影響していないようです。


Case3 30坪2階建ての場合

床・天井面積:49.686m2

側面積:4.8✖9.10✖2=87.36  4.8✖5.46✖2=52.42 87.36+52.42-20=119.78m2

窓:20m2


床:0.2✖49.686✖0.7=6.96W/K  天井:0.15✖49.686=7.45W/K

側面:0.2✖119.78=23.96W/K

窓:0.8✖20=16.0W/K

熱損失の合計:6.96+7.45+23.96+16.0=54.37


Q値=54.37÷99.37=0.547 W/(m2・K)

外皮の合計:49.686+49.686+119.78+20=239.15

UA値=54.37÷239.15=0.227 W/(m2・K)

kumashi

どちらも変化がありますが、Q値の方が変化が大きいようです。

面積の広い床と天井が半分になったことによって熱損失の総量が減ったことによってQ値が低くなりましたね。

一方で、断熱材をたくさん入れる天井や温度差係数が0.7の床など熱貫流率が低い箇所の面積が減って、逆に熱貫流率が比較的高い壁(側面積)が増えたからUA値は少し高くなったようですね。


Case4 45坪の平屋の場合

ちょっと面倒くさくなってきたけど続けます。

床・天井:149.06m2

側面積:2.4×9.10×2=43.68 2.4×16.38×2=78.62 43.68+78.62-30=92.304m2

窓:30m2


床:0.2×149.06×0.7=20.87W/K  天井:0.15×149.06=22.36W/K

側面積:0.2×92.304=18.46W/K

窓:0.8×30=24.0W/K

熱損失の合計:20.87+22.36+18.46+24=85.69W/K


Q値=85.69÷149.06=0.575 W/(m2・K)

外皮の合計:149.06+149.06+92.304+30=420.424

UA値=85.69÷420.424=0.204 W/(m2・K)

kumashi

30坪の平屋と比較してQ値はかなり低くなりましたね!

延べ床面積に対する外皮の面積がどんどん小さくなるので、大きい家ほどQ値は減っていく計算になります。

UA値に関しては、当然ではありますが変化はありませんでした。

 

Case5 45坪の2階建ての場合

ここまでの検証で、坪数が大きいほど、また、2階建てであるとQ値が低くなる傾向があることがわかりました。

Case5ではこの両方を取り入れて計算していきましょう。

床・天井:74.529m2

側面積:4.8×9.10×2=87.36 4.8×8.19×2=78.62 87.36+78.62-30=135.984m2

窓:30m2


床:0.2×74.529×0.7=10.43W/K  天井:0.15×74.529=11.18W/K

側面積:0.2×135.984=27.20W/K

窓:0.8×30=24.0W/K

熱損失の合計:10.43+11.18+27.20+24=72.81W/K


Q値=72.81÷149.06=0.488 W/(m2・K)

外皮の合計:74.529+74.529+135.984+30=315.042

UA値=72.81÷315.042=0.231 W/(m2・K)

kumashi

差が顕著に出てなかなか面白いですね。

2階建てになることでQ値がかなり低くなりました。

UA値はかなり高くなりましたね。

  

3.まとめ

計算結果をまとめて一覧にしました。これらの結果より、住宅の形状について色々と見えてきました。

Q値:坪数が大きい2階建てを建てると数値が低くなる

  • 住宅の形状や坪数による影響が大きい
  • 平屋は値が高くなり、2階建ては値が低くなる傾向がある(天井・床の熱損失が低い場合)
  • 坪数が大きいほど値が低くなる

UA値:坪数に関わらず、平屋を建てると数値が低くなる

  • 住宅の形状や坪数による影響は小さい
  • 平屋は形状による影響が小さいが、2階建てだと熱貫流率の低い床や天井の面積が減るため数値が高くなる
  • 坪数による影響は受けない

従来の基準(Q値)だと、同じ高性能の断熱材を使っていても小さい住宅はQ値が悪くなってしまいます。

この課題を解消するために、UA値という基準ができたんですね。

熱損失をみるとQ値との関係が深そうですね。このあたりも今後検証してみようと思います。

また、換気を含む場合とか、実際の暖房エネルギーとか、窓の熱貫流率が悪い場合とか、いろいろなCaseでの検証をしてみたいですね。

kumashi

最後まで読んでいただき有難うございました。

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